クンツァイト Kunzite 

 皆様はクンツァイトという宝石をご存知でしょうか。「9月の新しい誕生石」として追加された宝石ですが、実際にはなかなかお目にかかれないレアストーンでもあります。
 9月の誕生石といえば、「青いサファイア」をイメージされる方が多いと思います。英国王室に代々受け継がれる12ctの「ロイヤルブルーサファイア」はメディアでも話題になり、その高貴な美しさに多くの方が憧れを抱きました。
 今回は誕生石に新しく追加された、上品で可憐なピンクカラーが美しいクンツァイトをご紹介いたします。

クンツァイト

 クンツァイトは、「スポジュメン/Spodumen」と呼ばれる鉱物の変種です。上の原石画像を見てわかるように、薄い板状の結晶が積み重なっています。その薄い板状が、劈開性というヒビが入って割れやすい性質があるため、小さくカットすることは困難です。インクルージョンが少ない大きな結晶で採掘されることが多く、他の宝石より比較的大きくカットされます。ペンダントトップやパーティーシーンに着けるゴージャスなジュエリーなどに加工することができ、大きな石を好まれる方には、大変人気の高い宝石です。
 クンツァイトのピンク色はデリケートで、太陽光線(紫外線)に長くあたると退色(色褪せ)してしまう性質があります。直射日光は避け、長時間日光があたる場所に置いたままにしないなど、注意が必要です。

名前の由来は?

 クンツァイトは、ライラックの花のような淡い明るいパープルピンクで、透明感があり優雅な雰囲気を持っています。ニューヨーク5番街にあるティファニーの顧問も務めていた、当時から有名な宝石の権威者の「ジョージ・フレデリック・クンツ博士」の名前に因んで命名されたそうです。カルフォルニアの鉱山付近を歩いていたクンツ博士は、ある日ライラックピンク色の石を発見。ニューヨークへ送り鑑別してもらうもトルマリンと鑑別され、納得いかなかった博士は、実験を重ねてスポジュメンであることを突き止めたそうです。
 宝石の名前には有名な人名や採掘された地名の接尾語として、石を表わす「アイト(ite)」が付けられることが多いようです。そうして見ると、モルガナイトやタンザナイトなど、名前の由来が分かりやすい宝石が数多くあり、クンツァイトもそのひとつです。クンツ博士の宝石学者としての名声を後世に残しています。

主な産地

 クンツァイトの主な産地は、アメリカのカリフォルニア州です。クンツ博士によりサン・ディエゴ郡メサ・グランデで発見されたのち、同じくカリフォルニア州のほかの鉱山からも多量に発見され、それ以後カリフォルニアはクンツァイトの重要な産地となっています。他にマダガスカル、ミャンマーでも産出されいるそうです。マダガスカル産のクンツァイトは色が濃く、大粒なものが採掘されます。
 クンツァイトを選ぶ際にまず見極めたいのが「色の濃度」です。無色透明に近くわずかにピンク色が発色したものもありますが、できるだけ濃度があり、濃いライラックピンク色に発色したものを選んでいただきたいです。
 次に、クンツァイトの仲間をご紹介いたします。

クンツァイトの仲間

 クンツァイトは、「スポジュメン/Spodumen(リシア輝石)」と呼ばれる鉱物の変種です。マンガンを含むラベンダーピンクのものはクンツァイトと呼ばれ、「ヒデナイト/Hiddenite」というクロムを含む淡いフレッシュグリーンのものや、イエローカラーの「トリフェーン/Triphane」という種類もあります。ヒデナイトは、透明感のある美しい緑色の石ですが、宝石の素材として利用できるものは非常に少ない宝石です。
 スポジュメンは発見された当時、風化したような灰色の石で、艶もなく不透明な石だったことから、ギリシャ語の「燃えて灰になった」という言葉に由来しているそうです。その儚い美しさからコレクターからも愛される宝石です。ジュエリーとして製品になっているものは、なかなかお目にかかれない希少な宝石です。当店でも、製品は取り扱ったことがないのですが、見てみたいという方は年に一度開催されるレアストーンフェアへ足をお運びくださいませ。

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9月の誕生石・サファイア

 サファイアは、新しい誕生石として追加されたクンツァイトとともに、9月の誕生石です。サファイアの石言葉は、「慈愛」「誠実」です。誠実で一途な愛などの意味が込められているサファイアを、花嫁の幸福を願うおまじない「※サムシングフォー」のアイテムのひとつ「サムシングブルー」として結婚指輪の内側に石留めするブランドも多くあります。英国王室で代々伝わるロイヤルブルーのサファイアリングは有名で、日本でも婚約指輪として贈る方も多くいらっしゃいます。硬度は9とダイアモンドの次に硬い宝石ですので、日常使いにも安心です。
 サファイアはブルーだけでなく、ピンク、イエロー、グリーン、パープル、ブラック、ゴールデンなどカラーバリエーションが豊富にあり、世界5大宝石(ダイヤモンド・エメラルド・ルビー・サファイアの4つに、アレキサンドライト/真珠/翡翠のどれかひとつ)のひとつとされ、とても高貴な宝石です。誕生石でなくても世界5大宝石はいつか手に入れたい憧れの宝石でもありますので、是非色々なカラーを楽しまれてはいかがでしょうか?

※Something4(サムシングフォー)とは・サムシング・オールド・・・・何か古いもの:家族から大切なアイテム(家宝)や伝統を受け継ぐ・サムシング・ニュー・・・・・・何か新しいもの:新生活に新品のものを新調する・サムシング・ボロード・・・・何か借り物:幸せな結婚生活を送る人から幸福のおすそ分けをもらう・サムシング・ブルー・・・・・・何か青いもの:聖母マリアの色(純潔の象徴:青)を身に付ける

お手入れ方法

 クンツァイトは硬度7と硬い宝石ですが、上でも述べたように劈開性というヒビが入って割れやすい性質や退色のリスクもあるため、超音波洗浄は避けてください。ご自宅でのお手入れ方法は、ジュエリー専用のクロス、もしくはメガネ拭きなどの柔らかい布で優しく拭いてあげることです。汚れがひどい時は熱湯は避け、水もしくはぬるま湯に中性洗剤を溶かし数分浸けた後、先の細い毛先のブラシなどで軽く磨いてあげてください。
 連タイプのネックレスは、ナイロンコーティングや形状記憶のワイヤーなどで石をつないでますので、しっかりとすすいで水気をきってから自然乾燥してください。すすぎや乾燥が十分でないと中のワイヤーがサビてしまい、切れる原因になりますのでご注意ください。ご自宅でも汚れが取れない場合は、当店もしくはお近くの宝石専門店にてクリーニングをされることをおすすめします。
 上記で述べたようにクンツァイトは退色のリスクがある宝石です。保管の際は、日光がずっとあたる場所、高温多湿、また極度に寒く乾燥している場所に置くことは絶対に避けてください。ジュエリーケースにしまい、遮光状態にして保管することを心掛けましょう。

まとめ

 クンツァイトの石言葉は「無償の愛」、「無限の愛」、「純粋・可憐」です。その言葉からも分かるように、落ち着きのある癒しカラーのパープルピンクと、穏やかで柔らかい印象からイメージされたものがつけられています。
 クンツァイトはキャンドルの灯りや間接照明などの室内で行われるパーティーに、ドレスに映える『夕べの宝石』として、その輝きが最大限に引き出されます。淡いパープルピンクからほとんど無色に等しい色の強い二色性を示し、回転させながら観察すると結晶の長い方向においては濃く、それと直角のなす方向においてはほとんど無色になります。その可愛らしいピンクとクールなクリアカラーの二面性を大人&可愛いコーディネートで、イブニングジュエリーとして楽しまれるのもおすすめです♪9月の誕生石「サファイア」と共に、クンツァイトもコレクションしていただきたいですね。