「ダイヤモンドが買った時より輝かなくなった気がする」、「ジュエリーの色が変わってしまった」、「久しぶりに真珠を着けようとしたら、輝きが濁ったような感じがする。よく見ると表面もボロボロ…」などのご相談をお受けすることがあります。皆様のお手持ちのジュエリーは輝いていますか?
鞄や靴と同じように、実はジュエリーにもお手入れが必要です。特に夏場は汗をかきやすいため汚れやすく、冬場はハンドクリームが付着すると宝石の輝きが鈍くなりがちです。大切なジュエリーをより長く愛用し、いつまでも美しい輝きを保つためにはケアが欠かせません。適切なケアを行うことにより宝石の持ちも変わってきます。今回はご自宅でも出来るジュエリーのお手入れ方法をご紹介いたします。
基本は「着けたら拭く」
まずは、日常のお手入れ方法をご紹介します。と、言いましてもとても簡単。着けたら拭く、それだけです。使用後のジュエリーは汗や皮脂、クリームなどで汚れてしまっているため、そのままにしておくと本来の輝きが鈍くなる原因となります。一番簡単なお手入れ方法は、着けたら拭くことです。
ジュエリーは繊細です。拭く時も力強くゴシゴシと擦るのではなく、眼鏡拭きなどの柔らかい布で表面を優しく丁寧に拭いてあげましょう。そのひと手間で輝きが蘇ります。ティッシュペーパーやキッチンペーパーなどは、宝石によっては傷をつけてしまうことがあるので避けましょう。
着けたら拭くを習慣にしていても、落ちない汚れもあります。しかし、洋服と同じように宝石にもそれぞれ特性があり、拭くだけに留めた方がよいものや水洗いしても大丈夫な宝石など、取り扱いについても差があります。今回は代表的な宝石の特性とそのお手入れ方法についてお教えします。
ダイヤモンドの特性
宝石の王様とも呼ばれているダイヤモンド。地球上で最も硬い鉱物と言われ、数ある宝石の中でも絶大な人気を誇っています。
実はダイヤモンドには「親油性」という油分が付着しやすい性質があります。ダイヤモンドの表面に皮脂やハンドクリームなどの油分が付着すると、表面が膜を張ったような状態になり、蓄積されると白く濁った感じに見えてきます。油分によりダイヤモンドの光が遮られ、本来の輝きが損なわれてしまうということです。
ダイヤモンドは、指でちょっと触っただけでも簡単に指に含まれている油分が付着してしまいます。特にリングは指で触れることが多く、着けていると目にも留まりやすいため「輝かなくなった気がする」というご相談をよくお受けします。
ダイヤモンドのお手入れ方法
日常のお手入れとしては、柔らかい布で汗や皮脂の汚れを拭き取るようにしましょう。それでも輝きが戻らなければ、家庭用の中性洗剤やガラス用洗剤などを柔らかめの歯ブラシにつけて軽くダイヤモンドをブラッシングしたら、水で洗い流してあげてください。誤って排水口に流すことのないよう、洗面器の中で洗うことをおすすめします。ジュエリーの表面だけでなく裏側や留爪にも汚れが溜まりやすいので、そこも軽く優しくブラッシングしましょう。地球上で最も硬く安定しているダイヤモンドは、洗剤での腐食や歯ブラシによって傷ついたり破損したりする心配はありません。最後に乾いた布で丁寧に水気を拭き取ります。この時、水分も完全に拭き取るように気を付けましょう。これだけでもダイヤモンドは本来の美しさを取り戻します。
そして油分がつきやすいダイヤモンドは、身に着ける直前にお手入れすることをおすすめします。
真珠の特性
真珠はジュエリーの中でもとても繊細な宝石のひとつです。お手入れを怠ってしまうと艶やかな光沢が失われ、酷い時には表面がボロボロになってしまうこともあります。こうなると、真珠本来の美しい輝きを取り戻すことは出来ません。
では、なぜ真珠は輝きがなくなってしまうのでしょうか?真珠は、海と真珠貝の育みにより誕生する宝石で、その主成分は炭酸カルシウムです。炭酸カルシウムは酸に溶ける特性があり、人間の汗は弱酸性です。つまり真珠は、汗や皮脂などに含まれる酸にとても弱いということです。永い間使っていると真珠に付着した汗や皮脂によって、真珠の表面が酸化してゆき、光沢(輝き)が消えてしまいます。また熱にも弱いので、高温多湿な場所や直射日光は避けて保管する必要があります。
真珠のお手入れ方法
真珠のお手入れは着けたら拭く、これだけです。これをうっかり怠ってしまうと、真珠に付着した汗や皮脂の酸が浸透し、酸化がどんどん進行してしまいます。
使用した後はその日のうちに、真珠の表面に付着した汗や皮脂の酸を柔らかい布で拭き取ってください。真珠のネックレスは揉み込むように、ひと珠ひと珠優しく丁寧に拭きましょう。その際、糸を引っ張らないように注意してください。リングの場合は、真珠の上層部だけでなく裏側まで磨いてあげましょう。柔らかい布はお手入れ用のクロスがあればベストですが、ない場合は眼鏡拭きなどに使われるクロスを使用しましょう。必ず清潔な布を使用してください。
汚れがひどく、こびりついてしまっている場合は精製水を含ませた布で優しく拭いた後、柔らかい布で乾拭きしてください。もしくは、お店まで直接ご相談ください。
ルビー・サファイアの特性
ルビーとサファイアは、ダイヤモンドの次に硬度の高いコランダムといわれる鉱物で、その性質は同じです。コランダムの中で、赤色のルビーを除く全てのカラーのものがサファイアになります。コランダムの中に金属元素の一種、酸化クロムが入り込むことによって、コランダムは美しい赤へと変化します。決まった範囲内のわずかな酸化クロムが入り込んだ時だけ、コランダムは情熱的な赤色を帯びたルビーへと変身するのです。
ルビー、サファイアはダイヤモンドの次に硬度が高く、衝撃にも強い宝石です。熱や酸にも強く、耐久性にも優れていますので、比較的お手入れもしやすい宝石です。
ルビー・サファイアのお手入れ方法
お手入れ方法としては、ダイヤモンドと同じです。中性洗剤や水を使っても問題ありません。日常のお手入れは、柔らかい布で汗や皮脂の汚れを拭き取りましょう。輝きが戻らないようであれば、家庭用の中性洗剤などを柔らかめの歯ブラシにつけて軽くブラッシングし、水で洗い流します。最後に乾いた布で優しく水気を拭き取ってあげてください。
ダイヤモンドと同様、ルビーやサファイアはとても硬い宝石です。石同士がぶつかりえあえば、柔らかい石(エメラルドや真珠など)が傷付いたり、割れてしまうことがあります。持ち運びやジュエリーボックスに収納する際は、ジュエリー同士がぶつからないよう注意しましょう。
エメラルドの特性
エメラルドも非常に繊細な宝石です。硬さのある宝石ですが他の宝石に比べると、インクルージョン(内包物)が結晶の中に多く存在し傷も多いため、非常に割れやすく、衝撃に極端に弱いという特性があります。指輪の台に取り付けるだけでも割れることがあるそうで、職人泣かせの石とも言われているほどです。
そのため、エメラルドには含侵処理という樹脂やオイルに浸して加工する処理が施されています。含侵処理は見た目の改善や、耐久性を上げる目的で行われます。含浸処理はエメラルドには当たり前に行われている処理であり、現在市場に流通しているエメラルドの90%以上は含侵処理がされているとも言われています。そのため、エメラルドを熱いお湯に浸すとオイルや樹脂が溶けてしまい、加工前の傷や割れが現れることがあるので注意が必要です。また、熱や紫外線、乾燥にも弱いため、火や熱の近くでエメラルドを身に着けない、長期間日光が当たらないようにするなど、使用や保管にも気を付けたい宝石です。
エメラルドのお手入れ方法
エメラルドのお手入れも、基本的に柔らかい布で汗や皮脂の汚れを拭き取るだけに留めましょう。真珠同様、強く擦らず優しく丁寧に拭いてください。普段のお手入れはこれだけで充分です。
それでも汚れが取れない場合や自分で洗うのは心配という方は、宝石店などにクリーニングを依頼するのが一番です。水やぬるま湯の石鹸水で洗う方法も紹介されていますが、デリケートな宝石だけにプロの任せるのが安全です。また宝石店でよく使われる超音波洗浄機は、内包物が多いエメラルドや硬度の低い色石には使用厳禁です。石が割れたり、エメラルドの場合はオイルが流れてしまう可能性があるため、気になる方は念のため確認しても良いでしょう。
金・プラチナの地金の特性
ジュエリーの素材に多く使われている金やプラチナは、以外にもかなりやわらかい金属です。安定性が高く(時間が経っても変化しない)、様々な形に加工しやすいという特性を持っているため、ジュエリーの加工に多く用いられています。ですから、使用していると地金部分に細かい傷があっという間についてしまいます。金は10円玉で引っ掻いただけでも傷がついてしまうほどです。しかし、使用する以上それを防ぐことは出来ません。せっかくなら宝石だけでなく、ジュエリー本体を担う地金の部分もキレイにしたいですよね。
金・プラチナの地金のお手入れ方法
金やプラチナの地金部分は研磨剤入りの磨きクロスで磨くとピカピカになります。磨きクロスは宝石店などで販売していますから、それを手に入れて時折磨いてみることをおすすめします。小さな傷や汚れがとれて、鏡のようにピカッと美しい艶が出てきますよ。ネックレスのチェーン部分や細かなパーツ部分などは壊れないよう、石の周りはクロスで触れないように、特に軽く丁寧に磨いてください。磨き終わったら柔らかいきれいな布で、十分から拭きしたら完成です。
艶消しやヘアラインいった地金の表面に加工を施しているものは、研磨剤入りのクロスで磨くと加工が取れてしまうため磨きはNGです。しかしあえて加工をとるのであれば、クロスで磨くのは有効な手段のひとつと言えます。
また金でもWG(ホワイトゴールド)は、ロジウムコーティングという地金を白くするめっき加工が表面に施されているため、磨くとロジウムが剥がれて地金が見えてしまいます。例えるなら、爪に塗ったマニキュアが剥がれて、地爪が見えてしまうようなイメージです。剥がれた部分から地金の色味が出てきてしまいますので、WGに研磨剤入りのクロスによる磨きは行わない方が良いでしょう。また、特殊な例ではありますがブラックめっきなどの、色のついためっきがかかったものも剥げることがあるため、研磨剤入りのクロスは使用しないでください。
(画像左:つや消しの加工が施された指輪 右:ヘアラインの加工が施された指輪)
基本的にジュエリーには金性(きんしょう)と呼ばれる金の純度を表す刻印がどこかに打ち込まれています。金であればK18やK18WG、プラチナであればPt950やPt900などです。ほとんどのプラチナにはWGと同じようにロジウムコーティングが施されているため、パッと見ただけでそれがプラチナなのかWGなのか、見分けるのは難しいと思います。お手入れをする前に刻印をみて金性を確認していただくと安全です。
(画像左:プラチナと刻印された指輪 右:K18WGとダイヤモンドのカラットが刻印された指輪)
シルバー(銀)の特性
「しばらく着けてなかったからか、指輪がところどころ黒ずんでいる」「久しぶりにネックレスを着けようと思ったら、色が変わっていてビックリ。もともとはもっと明るい銀色だったんですよ」というご相談をお受けすることがあります。黒ずみのご相談はシルバーのお品に多く見受けられる事案です。
シルバーは一般的に時間が経つと空気中の酸素と化合して黒く変色しやすい特性をもっています。空気以外にも汗や皮脂、化粧品や入浴剤、温泉やプールなどでも化合が起こることがあります。シルバーの変色や黒ずみを抑えるためには、特に日々のお手入れが欠かせません。少し面倒に感じられるかもしれませんが、「手間をかけることで、ますます愛着が沸く」と、プラスに捉えられる方も多くいらっしゃいます。
シルバー(銀)のお手入れ方法
シルバーも使ったら、柔らかい布で汗や皮脂の汚れを拭き取るようにしましょう。空気中に含まれる水分や硫黄分にも化合して色が変わってしまうので、使わない時はチャック付きの袋などに入れて密閉し、なるべく空気に触れないようにしてください。それでも変色してしまった場合は下記の方法を試してみてください。
一番はシルバーの黒ずみ(変色)を除去する専用の洗浄液と研磨剤入りのクロスを使ったクリーニング方法です。こちらも宝石店などで販売しています。洗浄液はチェーンやパーツの細部など、布で拭くのが困難な部分まで簡単にクリーニングできます。さらに仕上げとして、研磨剤入りのクロスで磨き上げると見違えるほどきれいになります。お客様からも「黒ずみがなくなって、ピカピカによみがえった!」と大変ご好評いただいております。洗浄液のみや、研磨剤入りのクロスだけでも十分きれいになりますが、両方を駆使していただくとより美しく仕上がります。
シルバーのクリーニングにも注意すべき点がいくつかございます。まずは上記でも述べたように、ブラックやゴールド、ピンクゴールド色などのめっきがかかったものは、研磨剤入りのクロスで磨くとめっきが剥がれてしまうので使用しないでください。また洗浄液も成分によっては、めっきが剥がれてしまったり、宝石に影響を及ぼすものがあります。シルバーのお品によく見られる「燻し」(いぶし)という、凹んだ部分や溝の中などが黒く加工されているお品もめっきと同様、研磨剤入りのクロスで磨いたり、洗浄液につけると燻しがとれてしまうことがありますので、クリーニングの際はくれぐれも気を付けてください。研磨剤入りのクロスや洗浄液を使うときは、必ず記載されている注意事項を確認してから行うようにしましょう。
(画像左:ピンクゴールドとブラックコーティングのかかったネックレス 右上:影響を受けやすいトルコ石のついたリング 右下:目や鼻の部分などに燻しの加工がされた髑髏のリング)
クリーニングはいつでも無料!
日々のお手入れも大切ですが、ご自宅ではどうしても落ちない汚れもあります。その際は無理にご自身で対処せず、ジュエリーカジタへお持ちください。当店では微細な汚れを落とす超音波洗浄機をはじめ、貴金属光沢機のリシャイナーも完備しております。リシャイナーは金やプラチナなどの表面に付着した酸化皮膜を瞬時に除去する装置です。例えば金などの赤茶けた変色や、シルバーの黒ずみもきれいに除去してくれます。光沢を蘇らせる電気分解なので、地金が減ることはありません。わずか15秒ほどで、あっという間に元の輝きを取り戻します。
他店で購入されたお品でも無料でクリーニングいたします。クリーニングは全体の磨き上げも含めると約5分から10分程度で終わります。お店が混み合っていたり、お品が複数点ある場合はお時間をいただくこともございます。心を込めて丁寧にクリーニングいたします。是非、お気軽にお申し付けください。
最後に着けて最初に外す
最後にジュエリーを長くご愛用していただくために、ジュエリーを身に着ける際の基本もお伝えします。こちらもとても簡単です。ジュエリーは最後に着けて、最初に外すです。ジュエリーは身支度が完了した一番最後に着ける、帰った時は一番最初に外す、ということです。
化粧品やヘアスプレー、香水やアルコールは宝石にとって大敵です。必ず身だしなみを整えた後に、ジュエリーを着けてください。またジュエリーを着けたまま衣服を脱ぎ着すると、ネックレスやブレスレットのチェーンが衣類に引っ張られて切れてしまったり、ピアスを引っかけて落としてしまうなど、ジュエリーの破損や紛失にもつながります。着け外しが面倒だから着けっぱなしにしたいという方もおられますが、ジュエリーはとても繊細です。また、劣化も早めますのでおすすめ出来ません。
今回は簡単にできるジュエリーのお手入れ方法をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。ジュエリーの日々のお手入れは面倒に感じるかもしれません。しかし、手をかければかけるほど、愛着が湧き、より一層大切なジュエリーに思えるはずです。少し手入れをするだけでも、ジュエリーは再び美しい宝石としてよみがえります。
この機会に、正しいジュエリーのお手入れを始めてみてはいかがでしょうか。