真珠の種類

 世界中に生息する十万種におよぶ貝のうち、真珠養殖に使われる貝はわずか数種類です。海で採れるもの、湖で採れるもの、地域による違いや、母貝による色や形のバリエーションなどさまざまな種類があり、それぞれに美しさがあります。
 今回は真珠の代表的な種類と特徴をご紹介致します。

アコヤ真珠 アコヤ貝

 世界の宝飾品のなかで一般的に知られている真珠は、アコヤ貝を母貝として養殖されています。
 アコヤ真珠は別名「和珠」とも呼ばれ、子どもの手のひらほどの大きさで、採れる真珠の大きさは6~9mm位です。主な生産地は、三重県、愛媛県宇和海、長崎県対馬、熊本県天草などです。
 これらの地域は、海水温が13度以上ある湾内で水深の変化に富み、波が穏やかで、植物プランクトンが豊富です。また、冬期に海水温が10度を下らない避寒漁場があり、赤潮・台風に備えて避難漁場のあることなどの条件が整っています。

 真珠養殖場では、稚貝の育成、母貝の仕立て、核入れ、養生、管理、浜上げと様々な行程を成長に合わせて、貝をそれぞれの養殖漁場に移します。中でも核入れの工程はとても難しく、移植後に貝が死んでしまったり、挿入した核を吐き出してしまうなど、貝にとっても大きな負担となります。そのため貝の状態を見極め、熟練の職人が確実に行います。
 このようにいくつもの試練を乗り越えて生まれてきた真珠はとても貴重です。

ベビーパール

 

 ベビーパールとは、5mm以下の小粒なサイズの真珠の総称です。アコヤ真珠のベビーパールは、形が丸く良質なものが多く、見た目の可愛らしさは、日本のアコヤ真珠ならではです。
 ですが、ベビーパールの養殖は、高い技術が必要なため、非常に稀少なパールになります。通常のアコヤ真珠7mmから8mmの養殖においても、かなり細かい技術を施すのですが、ベビーパールを養殖するときは、更に細かい技術を施さないと良質なベビーパールを作ることはできません。

 現在では養殖量も少なく、希少化にともない、価格も上がる傾向にあります。ベビーだからと言って、成長過程の赤ちゃんではなく、極めて細かい核を使用しています。小粒とはいえ、真珠全生産量の2〜3%しか生産されておらず、生産地も三重県伊勢のみです。
 一連でつけても、素敵ですが重ねづけをすることにより、お洒落度がぐっと上がります。その小粒さゆえのかわいさがベビーパールの魅力です。

    

シードパール

 2mm以下の小粒の真珠の総称です。 海水産と淡水産があります。 中世からルネッサンス期にかけては、ダイヤモンドよりも貴重なものとされていました。 従来は芥子粒のように小さい真珠のことを意味していましたが、今は、大きさに関係なく無核真珠を呼んでいます。

 天然真珠であるシードパールは、遠い昔、人々が命をかけて海に潜り、人の手によって引き揚げられました。高価な宝石として王族や貴族の栄華の証として人気が高く、養殖真珠がない時代、シードパールは希少であり、とても高価でした。18世紀の後半から19世紀の後半にかけ、イギリスとアメリカを中心に作られてたジュエリーにシードパールはよく使われてきました。小さな真珠に孔を開けて糸を通し縫いつけていましたが、強度や太さの面から馬の尻尾の毛が用いられていたそうです。

 パールは「月の雫」「人魚の涙」とも呼ばれています。大切な人を思う涙の象徴でもあり、生き物である母貝からつくられることで生命力として輝く力の象徴としてブローチやペンダント、リングに使われています。

 

白蝶真珠 しろちょう貝

 真珠貝のなかでも白蝶貝は、最も大きなウグイスガイ科二枚貝で、大きいもので全長30センチ程にもなります。
 「南洋真珠」とも呼ばれ、主にオーストラリアで採れる銀白色のシルバーリップと呼ばれる真珠層の周縁部が銀白色の母貝から、ホワイトやシルバー系の大粒の真珠が生まれます。大きさは10~15mm位です。
 インドネシアやフィリィピン海域では、貝殻の内部が黄色のもの、ゴールドリップと呼ばれ、ゴールド系のパールが多く生まれます。

 成長するのに長い期間を要するため、真珠のサイズが大きく真珠層が厚くなり、形のバリエーションが豊富なのも白蝶真珠の魅力です。ラウンド(真円)、セミラウンド、ドロップ、バロックなど多様にあり、なかでも巻きが厚く形の変化も様々なバロックは人気があります。白蝶真珠の最大の特徴は、あこや真珠にはない、ボリューム感、大きさにあります。白蝶貝は真珠貝のなかでも最も大きい貝で、生まれる真珠も大きく、なかには20mmに達する大珠もあります。華やかなゴールド系や気品あふれるホワイト系、その色合いを際立たせる大きさが白蝶真珠の魅力です。


黒蝶真珠 くろちょう貝

 黒蝶真珠はタヒチ真珠とも呼ばれ、主に南太平洋のタヒチで産出される黒蝶貝から採れます。海水温が24~29度の温暖な海域で水深十数mの岩場に着生しています。貝の大きさはは15cmほどになり、大きいものは30cmを超えるものもあります。生まれる黒蝶真珠は8~15mm位です。色合いは真っ黒な印象ですが、グリーン、ブルー、イエロー、グレーなど様々な色を生みだします。
 黒蝶真珠のなかでも特に希少性の高い色が、オーロララグーン、オーロラプラチナブラック、ピーコックやピーコックグリーンと呼ばれる、孔雀の羽根のような七色に輝く色合いで最高級といわれています。


 

淡水真珠 いけちょう貝

 琵琶湖などの淡水で養殖されるいけちょう貝。大型の二枚貝で、採れる真珠も楕円形のものがほとんどですが、ラウンド(丸)、バロック、スクエア、スター、ライス、棒状のスティックなど、形も様々です。大きさは2~8mmで平均4~5mm、10mm以上のものは非常に稀です。色もホワイト、オレンジ、ピンク、パープル等と豊富です。

 日本では琵琶湖等で養殖されていますが、多くは中国から輸入されています。一度に沢山採れる為、流通される量も多くお値段も手頃です。あこや真珠と違い、汗に強いので普段のファッションに取り入れやすいのも魅力です。是非あなたのお気に入りを見つけてみて下さい。

マベ真珠 マベ貝

 マベ貝は日本では奄美大島より南の琉球列島に生息します。マベ真珠はマベ貝の内側に半円の核を挿入し、その核が真珠層で覆われて出来ます。核の形により、雫型やハート型など様々な形に4年から6年かけて養殖されます。マベ真珠のキメの細かさは他の真珠貝(アコヤ貝、白蝶貝、黒蝶貝)と比べても抜群で、その気品ある色と艶は格別です。キメの細かい真珠層を作る事で、見事な虹色の干渉色が生まれます。ホワイト系からメタリックのようなオーロラカラーやブルー系まで様々なカラーがあります。経年劣化し難い事も魅力の一つです。

まとめ

 パールの歴史は古く、エジプトでは紀元前3200年頃からすでにその存在が知られていたという説があります。日本では縄文時代の遺跡から淡水真珠が出土されているほか、「魏志倭人伝」にも白珠(パール)が贈り物として献上されたことが記されています。日本は古来よりパールの産地として名高く、その美しさは海を越えてヨーロッパまで伝わったといわれています。

実はたくさんあるパールの種類一生ものからお気軽なデザインを、TPOに合わせて使い分けてみてはいかがでしょうか。